
【4.学年による空間の住み分け】
打瀬中の学年別生徒の居場所を見ると、1年・2年・3年が3階・2階・1階に分かれている(fig.1)。このことはホームベースの利用が、1階が3年、2階が2年、3階が1年となっているため、学年の領域が大まかに階毎に分かれていることを示す。3層に分けられた生徒の居場所をつなげる役目を担っているのが1階の図書室と3階のテラスであるが、2階には1・3年の居場所が存在しない(fig.4)。これに対して聖籠中は打瀬中とは対照的に学年毎の階による住み分けが明確に存在しない.しかし、学年別に空間を分けようとする動きや意識
は表れている。教室棟に1箇所しかないトイレでは、居心地の悪さを感じている生徒のうち1年が52%、2年が28%、3年が20%であり低学年ほど割合が高い。また、体育館に居心地のよさを感じる生徒のうち1年が47%、2年が18%、3年が35%であり、多目的室では1年が23%、2年が70%、3年が7%と体育館と多目的室で住み分けが行なわれている。
【5.生徒と教師の接点】
打瀬中の教師は校務室と研究室に在室している.生徒の方から教師と積極的に接点を持とうとする時は、各研究室と各オープンワークスペースに向かう(Tab.4)。また、「先生
に会いに行く用件」では、生徒の教師に対する自発的な行動の項目が多数を占めている(fig.2)。聖籠中の教務室は「先生に会いに行く用件」で、自発的な用件が少なく、都活・委員会の用事が多数を占めている(fig.3)。そして生徒の教師に対する自発的な行動が向かった先は、保健室と相談室である(Tab.5)。打瀬中の研究室も同様の役割を担っており、実際、打瀬中の保険室には集まる生徒は少ない。また、聖籠中学校で教師との接点として機能し
ている空間はランチルームである。テーブルを囲んでそこに教師が同席することで、生徒の集団と教師との接点が生じている。よって、打瀬中学校は研究室とオープンワークスペースといった個人または小さな集団と教師の接点があるのに対して、聖籠中学校は集団と教師の接点があるが個人と教師の接点は少ないことがとらえられた。