居場所選択と移動に見る     
      生徒の行動特性について

〜打瀬中学校(教科教室型)・聖籠中学校(特別教室型)のケーススタディ〜


 新潟大学教授 西村伸也教授

【6.クラス単位の居場所】
 打瀬中学校のホームベースは1クラスの生徒数に対して狭いことと、個人の領域となる机や椅子が存在しないため、クラス全員の居場所とはなっていない。「大勢でいて居心地が悪い」と感じる生徒は空いているホームベースに移動している(fig.6).また、2つの空いているホームベースは男女が分かれて着替えたり、話の場となっている。これらの行為はクラスのホームベースから溢れ出した行為で、空いているホームベースが明確な役割を担って機能している(fig.7)。
 聖籠中で教室を「居心地がいい場所」として選ぶ生徒は、高学年の男子はど少ない(fig.6)。教室は女子の空間であり、3年男子はクラスの生徒だけでまとまる空間を持っていない。クラス内に作られるいくつかの集団は、その中の一人の座席を中心として居場所がある。集 団は大きくなると周囲の座席にも及び、その座席の生徒の居場所を奪うことになる。この生徒がいずれかの集団に属していなければ教室内の居場所を失うことになる(fig.7)。よって空間の大小に閑わらず、生活の拠点に居場所を失う生徒が生じる。

 


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